意外に知られていない鉄製の効用
鉄製のフライパン(鍋も含む)にはもうひとつ「料理が美味しくなる」という独特のメリットがあります。実は最近の鉄欠乏傾向は、調理道具が変化してきたことが関係しているといわれているのです。
それは鉄製のフライパンや鍋からテフロン加工やステンレスのものに材質が変化して、調理道具から溶け出す鉄分を摂取できなくなったからという考え方から来ているもので、実際に鉄製フライパンを使うと、1回(1食)につき2~4ミリグラムの鉄が溶け出すとされているのです。
鉄分は本来人間の体内に3~4グラム存在しているものですが、その67パーセントは赤血球の中に存在し、残りは肝臓や脾臓に27パーセント、他にも筋肉内に存在しています。鉄の体内での分布は他にも組織鉄として髪の毛や爪などの組織に含まれますが、食事からは1日に10~20ミリグラムの鉄を摂取しており、そのうち約10パーセントの1ミリグラムから2ミリグラムを十二指腸や小腸から吸収することになります。
従って十二指腸に炎症があったり、アスピリンなどの薬によって腸内が荒れると、鉄分の吸収効率は低下して鉄バランスがマイナス傾向になります。鉄分は赤血球中の血色素であるヘモグロビンをつくる原料として、血色素が酸素と結合して体内に酸素を供給しますから、鉄バランスが悪くなると体内への酸素供給も減少して顔色も悪くなるわけです。
料理で例えれば、鉄以外のフライパンでチャーハンをつくると鉄含有量が1.4ミリグラムとなりますが、鉄のフライパンなら5.2ミリグラムになるとされており、これだけで鉄の摂取量がかなり増えるのです。又、この鉄分によって料理の味も引き立つというわけです。